関西医科大学 形成外科学講座

Kansai Medical University, Dept. of Plastic and Reconstructive Surgery

脂肪幹細胞を混合した脂肪移植(乳房再建)の臨床研究を開始します

関西医科大学附属病院は、新たな乳房再建(乳房の形を整える手術)の方法として、「自己脂肪幹細胞を混和した遊離脂肪移植」を計画し、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(通称『再生医療新法』)に基づき、第3種再生医療等提供計画を厚生労働省近畿厚生局に提出し、受理されました。
この法律に従って、自分の脂肪幹細胞を移植する方法を用いた乳房再建の臨床研究を始めます。

幹細胞とは

人間の失われた臓器や組織を作り出す再生医療において核となる細胞で、何度も分裂できる能力と、いろいろな細胞へ変化する能力を持ちます。よく知られている幹細胞としてはES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞(人工多能性幹細胞)、体性幹細胞などがあります。
ES細胞、iPS細胞は拒絶反応、倫理面や腫瘍化の面で課題があり、実際に治療に用いられているのは体性幹細胞のひとつである骨髄由来幹細胞です。
しかし、骨髄から幹細胞を採取するのは患者さんの負担が大きく、また、得られる細胞数も少ないという問題点もあります。

脂肪幹細胞とは

近年、皮下脂肪組織の中に豊富な幹細胞が存在することが発見されました。それまでの主流である骨髄由来の幹細胞よりも多くの細胞が採取でき、しかも皮下脂肪から得られるため、採取も容易で移植に際しても拒絶反応や培養も必要なく、安全性も高いことが報告されてされました。

自己脂肪幹細胞を混合した脂肪移植とは

乳がん術後の乳房再建には、自分の体の組織をとって移植する自家組織移植やインプラントなどの人工物を使う方法のほか、近年脂肪移植という方法が注目されています。しかし、」患者さんご自身からとった脂肪をそのまま注入する従来の脂肪注入では、脂肪が定着する確率(生着率)が低く、満足な結果が得られにくいことが問題となっていました。また、乳房全摘手術の場合はインプラントや自家組織移植がよい適応になるものが多いものの、乳房温存術(乳房をできるだけ残す手術)による部分的にくぼんだ(陥凹)変形の場合、良い再建方法がないのが実情です。

そこで、注目されているのが、自己皮下脂肪組織由来細胞移植という方法です。この方法は脂肪を直接注入するのではなく、脂肪から細胞を取り出して、その細胞だけを移植する方法です。脂肪組織内には脂肪細胞や血管の壁を作る細胞があり、この細胞を移植することで、血管を備えた脂肪組織が作られるといわれています。また、この方法は脂肪の生着率が高いといわれています。この方法は、保険が適応できる治療ではなく、現段階では臨床研究または保険のきかない自費治療として実施することが求められます。

今回の臨床研究の目的

この臨床試験の目的は、以下の点になります。
  • 自己脂肪由来幹細胞を混合した脂肪移植治療という新しい治療が、乳房温存術後の乳房変形などの乳房形態の問題点を改善するかどうかを検討します。
    その他、下記の項目も評価します。
  • 自己脂肪由来幹細胞を混合した脂肪移植治療という新しい治療が、他に推奨される方法がない乳房温存術後の乳房変形に対する治療法として、安全であるかを検討することです。
  • 乳癌術後の乳房に関する問題点から生じる、あなたの精神的・肉体的な負担が本治療により軽減され、生活の質が改善されうるかどうかを評価します。

治療の方法

  1. 脂肪吸引を行います。吸引部位は大腿部(太もも)、腹部、のいずれかからです。
    1㎝程度の皮膚切開を数カ所行い、そこから専用の管(吸引カニューレ)を用いて、脂肪を吸引します。
  2. 吸引後、切開した部分を縫合します。
  3. 専用の機器で、吸引した脂肪から、脂肪組織由来細胞を抽出します。
  4. 濃縮した脂肪組織由来細胞と必要量の脂肪細胞を混合し、混合液を作ります。
  5. 脂肪組織由来細胞が高い割合で含まれた脂肪混合液ができます。
  6. 混合液を乳房の陥凹部分に注入します。

【試験に参加していただける方】(以下の条件のすべてに当てはまる方)

  1. 乳癌に対し乳房温存療法術後、1年以上経過している方
  2. 上記①の乳房温存手術時の臨床病期がT1かつN0M0の早期乳癌であった、現在20才~79才の女性 (同側多発、両側乳癌の方は参加できません) 乳癌の組織学的所見としてエストロゲン受容体陽性(陽性細胞1%以上)であり、HER2は以下のいずれかに該当する方
    • 原発巣の検体組織の腫瘍細胞中で、免疫組織染色(IHC)が(-)または(1+)の場合
    • 原発巣の検体組織の腫瘍細胞中で、IHCが(2+)かつFISH 陰性の場合
  3. 乳癌に対する抗がん剤の投与歴がない方
    ※この他にも基準があります。検査結果によってはご参加いただけない場合があります
実施診療科:関西医科大学附属病院 形成外科
担当医師:◎覚道奈津子・楠本健司

この治療は保険適用外であり、この試験の研究費を使用するため、治療費については患者様の自己負担はありません。詳しくは下記にお問い合わせ下さい。
※本臨床研究は、最初の段階として5名の患者さんにご参加いただく予定です。
脂肪幹細胞を混合した脂肪移植(乳房再建)臨床研究にご協力ください
リーフレットダウンロード(PDF)
<本臨床研究に関するお問い合わせ>
  • 臨床研究については下記までお問い合わせ下さい。
    関西医科大学臨床研究支援センター
    TEL:072-804-0101(内線2551) 平日9:00~17:10
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