唇裂口蓋裂
口唇口蓋裂は、生まれつきの顔面の形態異常のみならず、それに伴い言語や咬合にも問題を生じます。当科ではそれらのトータルケアを行い成長による変化を考慮した計画を立てて手術的治療や言語治療などを行っています。
・口唇裂初回手術
当科ではMillard法、鬼塚法、Fisher法などの代表的手術法からそれぞれの利点欠点について検討を行い、三次元的な形態改善にこだわった独自の手術法を開発しました。その術式はアメリカの形成外科ジャーナルに掲載されました。治療結果が「自然」で「目立たない」ことを重視した治療を行っています。また、その治療成績については、三次元的・経時的な変化について解析を継続的に行っています。更なる改善を目指し、より安定した治療法となるよう努めています。
・口蓋裂初回手術
口蓋裂治療は構音および顎発育への配慮が必要な治療です。当科では筋層再建を重視した治療法を行っています。術後の構音については当科の言語外来、矯正については提携している矯正歯科と連携を取って診療にあたっています。手術結果については瘻孔の発生はほぼ見られず安定した治療成績が得られています。
・鼻形成手術
当科では口唇裂初回手術では鼻尖部への治療は行いません。これは日本人の乳児の鼻軟骨は欧米人に比べ脆弱であると考えているためです。口唇裂初回手術の際には土台部分(鼻柱基部・鼻翼基部)の位置の矯正を重視した治療を行っており、違和感が少なく将来の鼻尖部の形成もしやすくなるように努めています。しかし、鼻部は顔の中央にあるため歪みが目立って気になることがあります。その場合は就学前に軟骨の位置の矯正治療を行う方針としています。学校生活を考慮した時期設定であるため、比較的許容できる場合には成長が終わる頃まで待機します。
・顎裂手術
口唇裂の患者様ではしばしば顎裂(歯槽部の骨欠損)を認めます。良好な歯槽形態・咬合を再現するために矯正治療の矯正歯科医と提携して適切な治療時期を見極め、骨移植を行います。
・その他の手術
口唇裂手術や口蓋裂手術では残念ながら満足できる治療結果が得られないことがあります。良好な結果のためには初回手術が最も重要なことは言うまでもありませんが、施設により様々な手術法があり、手術方法の違いにより様々なパターンの変形や機能障害が起こります。特に手術跡(瘢痕)の形態・性状はその後の治療に大きな影響を与えます。当科は他院で治療を受けた二次症例の経験も豊富であり、個々の病状を細かく分析してそれぞれに適した方法を検討し、より良い治療結果が得られるように努めています。